小沢健二「シッカショ節」考 (コンサートツアー「ひふみよ」開催一周年に寄せて)

昨年、2010年1月に開催が突然発表されてから、同年上半期の音楽ファンの話題はこの事で持ちきりとなったといっても過言ではない。

そう、小沢健二のコンサートツアー「ひふみよ」である。

十数年ぶりとなったツアーではそれまでの楽曲はもとより、新曲も披露されたのだが、
その中でもツアー終了後に配信も行われた「シッカショ節」はまさかの音頭調で、ファンの間でも「何故、音頭なの?」と物議を醸したものであった。

今もって音頭調の曲を作った理由等は具体的に語られておらず、実際に会場に足を運んだ自分としても常々疑問だったのだが、
一応仮説らしきものを導きだせたので、つらっと書いてみた次第である。


●「ひふみよ」で主に演奏された、アルバム『LIFE』期の曲の基盤となったのはブラックミュージック。
そのルーツを辿ると、共同体から派生したコミュニティに根ざした音楽と言われている。

日本人にとってリアルな、コミュニティに根ざした音楽とは、お祭りで鳴っている音頭。

つまり、ブラックミュージックと音頭は、"共同体のダンスミュージック"という意味では同じなのである。


●では何故、「ひふみよ」ではそれらを奏でたのか?
会場で売られていた本「うさぎ!」に次のような一文が載ってて、なんとなく理由が見えた気がした。
以下抜粋。

「灰色はそもそも、人が集まるのが嫌いだ。人がくっつくのが嫌い。人はくっつくと、元気になってしまうから。だから人にはなるべく孤独でいてほしい」

小沢健二「うさぎ! 沼の原篇 後期」 P564より)

●つまり、小沢が"灰色"に対して起こした行動が今回のツアーで、キーワードの一つに"共同体"があったのではないか。
そして、人々が孤独にならず、様々な人と出会い、語らいあってほしいと願っているのではないだろうか。


それにしても「ひふみよ」は、「シッカショ節」に留まらず、曲と曲の間に挟まれた朗読、開催に至るまでの経緯や宣伝方法、演出などなど、あらゆる点で考えさせられる事が多かった。
にも関わらず、演奏されたのはグルーヴ感と多幸感が一体となったキラキラとした曲調だったわけで。
正に小沢健二にしか成し得ない、なんと稀有なライブであったことか!と今更ながら痛感している次第である。

"don't think, feel!"でなく、"don't feel, think!"でもなく、"Let's think and feel!!!"なのである。


アタマばっかりでもカラダばっかりでもダメよね(プチダノン)